生まれ故郷の愛知県の海は透明度が高くない。そのイメージに引っ張られ、中部地方には綺麗な海はないと勝手に残念に思っていた。ところが西伊豆の海はすごかった。自分で下げたハードルも相まって、忘れられない海になった。
西伊豆の海に出会ったのは、初めて本格的なキャンプをしたときだった。「雲見夕陽と潮騒の岬オートキャンプ場」というところに連れて行ってもらったのだが、名称を空で言えるようになるまで時間を要した。それだけでなくキャンプ道具は持っていないし、アウトドア知識どころか料理スキルもほぼ皆無な私だった。よく言えばお客様、悪く言うとお荷物ってところだ。
もちろん自他ともにお客様の認識だったので、当日の力仕事は人一倍活躍するつもりだった。だが、お荷物になる事象が発生してしまう。あろうことか、前日に人生で初めての腱鞘炎を発症したのだ。理由は、ジムで腕立て伏せをしたから。情けない思いを抱えつつ、いい大人の私は治りが遅くなるのが怖く、速攻で接骨院に駆け込んだ。
患部に電気を流してもらっている間、隣では四十肩の患者さんが治療を受けていて、その会話が聞こえてきた。四十肩は症状も治療もめちゃくちゃ痛いのだ、と苦しそうに先生に訴えている。先生も「四十肩の患者さんはみんな苦しんでます。」と返している。
よく聞く病名だったが、そんな誰しもが口を揃えて辛いというものだとは思っていなかった。四十肩には気をつけようと、静かに学んだ。
そんな学びをしつつ、私の両腕には湿布と外れないためのカバー包帯が巻かれた。見るからに腕を動かせない人になった。これはもう「重いものは運べません、か弱い系女子」を演じるしかない。
そして当日、私の痛々しい両腕をみんなが心配してくれた。情けない理由を述べつつ、か弱い系女子でいかせてもらうことを宣言した。
申し訳ないくらいに手厚くフォローをしてくれたおかげで、お荷物(私)は、本当に素晴らしいキャンプを経験できた。昼も夜も朝も伊豆の美しい海を眺め、焚き火を囲みながらおしゃべりをし、美味しいご飯を食べ、贅沢で最高な2日間になった。
今度キャンプに行く際は、1週間前から筋トレの内容には気をつけ、せめて力仕事頑張るお客様でありたいと思う。