🏝尾道で見下ろした海の話。

尾道の石鎚山鎖修行 エッセイ

広島県の尾道市は、ここ10年くらいずっと行ってみたい海の街だった。昔読んだ本から影響を受け、長い間心の中に「尾道」というワードがあったが、観光名所の要素は少ない場所なので、友人との旅行の目的地になることはなく、訪れる機会がなかった。

5年前に初めて一人旅で岡山県倉敷まで行った。そこから尾道までは近かったので足を伸ばそうとしたが、雨と大根3本の重みに負け、断念した。

ちなみになぜ大根を持っていたかというと、この旅の最大の目的“胃の健康“のために祈祷した際にもらったものだった。「これを生で食べるといい」と、優しい神主さんが持たせてくれたので、もちろんNOとは言えるはずがなかった。

それから約5年、ついに憧れの尾道に行ける機会が巡ってきた。中国四国地方に車で旅行することになったので、そのプランに尾道観光を組み込んだ。

尾道に足を踏み入れた。想像していた通りの街で、一瞬で好きになった。街と海が一体化している感じがする。入り組んだ海岸線と、街の人たちが作り出しているあたたかい空気感がたまらなくいい。折り畳み自転車を積み込んでいたので、海風と尾道の空気を一身に受けながら、駆け抜けた。

港から船で通学しようとする制服姿の学生を見かけた。ああ、この街で生まれたらどんな人生になっていたんだろう、と思わず考えてしまう。

そして「石鎚山鎖修行」という小高い丘を目指した。そこの頂上から見える景色は最高だった。まさに尾道らしい海の街を見渡していると、爽やかな風が吹き抜ける。ほかに誰もおらず、まるで秘密の場所のような感じも素敵だ。これがずっと憧れていた尾道の街だと、予想を裏切らない素晴らしさが嬉しかった。

尾道で見下ろした海

尾道観光といってもとにかく街並みが楽しみだったので、それ以外にやることは「食べること」だけだった。

朝ごはんは、港近くの定食でスタートした。丁寧に作られた料理に大満足だった。お昼に広島焼き、塩レモンラーメンを食す予定で、まだワクワクが残っている。

朝ごはんと昼ごはんの間にやることは特になかったので、名物の柑橘ジュースを求めてカフェに入った。すると、そこで売っていたパンが目に入った。昼ごはんのことと自分の胃のキャパの小ささが頭をよぎったが、そのパンの美味しそうさに引きずられ、思わず食べてしまった。

その後、広島焼きのお店に入ったが、案の定空腹ではなかった。なので私は広島焼きではなく一番ボリュームの少なそうな「ねぎ焼き」を注文した。めちゃくちゃ美味しくて、途中満腹になったお腹を無視して食べ続けた。

ねぎ焼きのおかげで完璧なまでに満腹になり、ラーメンは泣く泣く諦めた。

あまりにもお腹が苦しくて、動くのもしんどくなった。最後に散策しようとした公園に着いた途端まっすぐにベンチをめがけ、そのまま寝転んだ。これが正真正銘の食い倒れだと苦しいながらも頭の中に「食い倒れ人形」の笑顔がよぎった。

寝転んでいると、猫の街尾道らしく、1匹の猫が私の隣で寝転び始めた。気持ちよさそうに寝る姿を真似しながらゴロゴロしていると、いつの間にか眠りに落ちていた。その後目が覚めると、その猫はもういなくなっていた。

昼寝友達になった猫

憧れの尾道は、猫以上に寝て幕を閉じた。

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